2015 March

 

   
 
 
母のワードローブを整理するのも、さまざまな思いが去来してなかなか進まな い。お気に入りのスーツやコート、どれも一緒に出かけた時の思い出が蘇 り胸 がいっぱい。ブラシでホコリを払い、ボタンの緩みを確認して・・、こうして一 つ一つ丁寧にワードローブに戻していく事で少しずつ気持ちも整理 されて行く よう。形見分けとして貰って頂く方のお顔を思い浮かべながら・・・。

 

 

   
 
 
 
母を亡くして直ぐに結婚式に出席するのもなかなか難しい・・・と思っていたけ れど、新婦になる友人と話しているうちに心が静まり、このタイミング でお喜 びのお席に伺う機会に感謝する。旧小笠原邸のクラシックで落ち着いたインテリ アと、新郎新婦のお人柄が滲み出るような温かな披露宴に感激す る。一足早い 大きな桜のインスタレーション、もう春が近いことを知る。

 

 

 
 
さまざまな事が混乱している中、とにかく一度パリに帰ることに。ローマに行く 主人と同じアリタリアでまずはローマへ。快晴の空にアリタリアのロゴ が美し く映えて、沈んでいた心が少しずつ晴れて行くような気がする。ローマからパリ への便は夕暮れを飛ぶので本当に美しく、とっぷり暮れたパリの 街が見えてき た時にはなんとも言えない気持ちになる。

 

 

 
 
久しぶりのパリ、時差と少しの興奮で夜明け前に目覚める。カフェがようやく開 く頃、少しずつ夜が明ける。「カフェでみんなに会ったら何て言おうか し ら?」・・・。さまざまに溜まった雑用をこなし夕暮れを迎える。毎日毎日、何 とか気持ちを保って暮らしているせいか、時々に表情を変える空の美 しさに癒 される。

 

 

 
 
 
マルシェに行くのはもう何ヶ月ぶりだろう?久しぶりに5区のモベール広場のマ ルシェに行く。結婚したばかりの頃住んでいたので何だか懐かしい。戦 前、祖 父が住んでいたモンジュ通りの直ぐ近くのこの広場、母ともずいぶん散歩をし た。チーズのブティックの芸術的なこと!お花のスタンドから母が 大好きだっ たユーカリの香り・・・。

 

 

 
 
 
昨年の12月、主人の大学に客員教授としておいで頂いたD教授。母の看病が大 変だった時期で、とても心配して下さった。もう27年も友人なので思 い出は 尽きず・・・。素晴らしいディナーにお招き頂く。悲しんでいる私を少しでも元 気ずけようというお気持ちが、そこここに伝わる細やかなお心遣 いに感激す る。やっぱり友人の家ディナーが私の中では「輝く三ツ星」!

 

 

 
 
 
さまざまに溜まっていた事務手続きに追われる日々。途中ヴィクトワール・広場 を通ったのでふと車を止めて歩いてみる。パリに着いてスグ、アクセサ リー・ デザイナーのスタージュ(見習い)をしてブティックも今では不動産屋さん に・・・。このブティックのお隣がフランス赤十字だった事が今の私 のチャリ ティー活動のきっかけになっている。

 

 

 
 
その頃改修が終わってオープンしたばかりだったギャラリー・ヴィヴィエンヌ。 お手伝いをさせて頂いていたデザイナーのP氏に夢のようなサロン・ ド・テに 連れて行って頂いたのも素敵な思い出。母が来たときもよくランチを一緒にした 懐かしい場所。27年経った今もお付き合いが続いているP氏 にも、母の訃報 を伝えなくては・・・。思い出は温かく、また少し元気になる。

 

 

 
 
 
ようやく膨大な量の事務仕事を終えて、夕方の便で主人の居るローマへ。夕暮れ の中を飛ぶので窓からは幻想的な空・・・。パリの事務を無事終えられ てほっ とする。ひとつ一つハードルを越えて元の自分に戻るような毎日。悲しみはこう して少しずつ癒えて行くのかも知れない。

 

 

 
 
ローマのレオナルド・ダ・ヴインチ空港に到着すると主人が車で迎えに来てくれ ていて感激する。延々に終わらない空港の拡張工事・・・。「いつ来て も工事 中」?イタリアらしいFIATを借りたとかで、ローマ市内をおまけのドライ ブ。若い頃丹下健三氏の事務所でローマの都市計画を担当していた 主人にとっ ては思い出深い街。パリとは違うスケールの大きな建物が迫り来るようで何だ か迫力のドライブ!

 

 

 
 
ローマに着くと建築家のB教授ご夫妻のお宅で久しぶりのディナーを。もう本当 に長いお付き合い。昨年、東京滞在中に奥様のお母さまが急逝され急遽 ご帰国 になった事など、お互いいろいろな事があっても何とか頑張りましょうね・・・ と、悲しんでいる私には何よりのディナーとなる。すっかりラッ クスして、深 夜までお喋りは続く・・・。

 

 

 
 
diary index 日本に帰国するともう春の気配。例年通り卒業式が終わり、恒例の主人のゼミの 卒業パーティーを我が家で。もう長いお付き合いになって来た院生の皆 さんに は、母の看病の間ずいぶん励ましてもらった。私にまで素晴らしい花束を頂いて 感激する。卒業してもいつでも遊びにいらして下さいね!私も悲 しい気持ちか ら卒業して心機一転、4月を迎えたいもの・・・。 page top

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